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8. 表面処理
アルミニウムは非常に耐食性の優れた材料で,無処理でも充分な耐久性を期待できるが,更に耐久性を高め,いつまでも美観を失わないように表面処理が施される。アルミニウムの大きな特長のひとつに表面処理性のよいことが挙げられる。陽極酸化処理(アルマイト)や塗装によって耐食性を高める他に,着色などによってさらに意匠効果を高めることができる。
1. アルマイト
アルマイトの種類としては表16に示すようなものがある。
表16 各種アルマイト処理の特長
皮膜の種類 | 内 容 ・ 特 長 | 皮膜構成・構造 | 用途 | 耐候性 |
硫酸皮膜 (シルバー) | 硫酸水溶液中で電解して得られるもので,もっとも代表的な表面処理皮膜。透明度がよく,染色や電解着色の場合の母体皮膜としても利用される。耐食性,耐摩耗性良好。 | ![]() | 建築部材・ カーテン ウォール | ○ |
自然発色皮膜 (電解発色 皮膜) | 染料や金属塩を用いず,アルミニウム合金の材質及び電解条件の組合せにより発色させる。通常のシルバーアルマイトより一般に高電圧で処理され,その皮膜は日光堅牢度,耐食性とも優れている。色調はゴールド,アンバー,ブロンズ,グレーなどがある。 | ![]() | カーテン ウォール | ○ |
電解着色皮膜 | シルバーアルマイトをベースにして金属塩を含む電解溶中で二次的に電解し,アルマイト多孔層の最深部に金属を吸着析出させて着色する。その皮膜は日光堅牢度,耐食性とも自然発色皮膜と同様に優れている。色調範囲は自然発色皮膜より広く,ブロンズ,アンバーコールド,ブラックなど淡色から濃色まで任意の色調が得られる。 | ![]() | カーテン ウォール | ○ |
染色皮膜 (有機染色) (無機染色) | 一般に硫酸皮膜を染料で染色する。特に有機染色はバラエティーに富んだ鮮やかな色調が得られる。有機染色の一部や無機染色は日光堅牢度がよく建材等にも使用される。 | ![]() | 内装製品 | △ |
複合皮膜 (アルマイト+ 塗膜) | アルマイト上に更に塗装するもので耐食性に優れ,塗膜光沢から意匠性も高いもっとも一般的な方法である。 | ![]() | 建築部材・ 高級 力ーテン ウォール | ◎ |
JIS H 8601-1999「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜」における皮膜の種類と主な用途例,陽極酸化皮膜の性能を表17及び表18に示す。陽極酸化皮膜の呼び方は,皮膜の種類及び表19に示す品質項目の記号の順によるが,受渡当事者間の協定によって品質項目の記号を省略できる。
また,JIS H 8602-2010「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜」の種類及び性能を表20及び表21に示す。
表17 皮膜厚さの等級と主な用途例
皮膜 厚さの 等級 | 主 な 用 途 例 |
AA 3 | 反射板,家電部品(内部)など |
AA 5 AA 6 AA10 | 台所用品,日用品,家電部品,装飾品,家具部材,車両内装,建築部材(屋内)など |
AA15 AA20 AA25 | 台所用品,車両外装,土木・建築部材(屋外),船舶用品など |
表18 陽極酸化皮膜の品質(JIS H 8601-1999)
等級 | 平均皮膜厚さ (μm) | アルカリ滴下試験又は 起電力式耐アルカリ試験 | キャス耐食性 | 耐摩耗性 | 封孔度 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A種(1) s | B種(1) s | 試験時間 h | レイテング ナンバ RN | 砂落とし 摩擦試験 s | 噴射摩耗 試験 s | 往復運動 平面摩耗試験 ds/μm(2) | りん酸-クロム酸水溶液 浸せき実験 g/dm2 | 染料吸着試験(3) 汚染度 | アドミッタンス測定試験(4) μS | ||
AA3 | 3.0以上 | – | – | – | – | – | – | – | – | – | – |
AA5 | 5.0以上 | 30以上 | 0.03以下 | 0~2 | 20以下 | ||||||
AA6 | 6.0以上 | 30以上 | 90以上 | 8 | 9以上 | 150以上 | |||||
AA10 | 10.0以上 | 50以上 | 150以上 | 16 | 500以上 | 24以上 | |||||
AA15 | 15.0以上 | 75以上 | 225以上 | 32 | 750以上 | 36以上 | |||||
AA20 | 20.0以上 | 100以上 | 300以上 | 56 | 1000以上 | 48以上 | |||||
AA25 | 25.0以上 | 125以上 | 375以上 | 72 | 1250以上 | 60以上 |
表19 品質項目の記号
品質項目 | 試験方法 | 記号 |
---|---|---|
耐食性 | アルカリ滴下試験 | KS |
起電力式耐アルカリ試験 | KC | |
キャス試験 | LC | |
酢酸酸性塩水噴霧試験 | LA | |
中性塩水噴霧試験 | LN | |
耐摩耗性 | 砂落とし摩耗試験 | WRF |
噴射摩耗試験 | WJ(T) | |
往復運動平面摩耗試験 | WRW | |
封孔度 | りん酸-クロム酸水溶液浸せき試験 | SP |
染料吸着試験 | SD | |
アドミッタンス測定試験 | SA | |
変形による耐ひび割れ性 | 変形によるひび割れに対する抵抗性試験 | AR |
色の促進耐光性 | 光堅ろう度試験 | FW |
紫外光堅ろう度試験 | FU | |
鏡面光沢度 | 鏡面光沢度試験 | GR |
写像性 | 視感測定法 | CV |
機器測定法 | Cl | |
絶縁耐力 | 絶縁耐力試験 | IC |
連続性 | 連続性試験 | CS |
皮膜質量 | 皮膜の単位面積当たりの質量測定試験 | ρA |
表20 陽極酸化塗装複合皮膜の種類
種類 | 複合耐食性 | 耐候性a) | 参考 | ||
---|---|---|---|---|---|
複合耐食性試験b) | キセノンランプ式 促進耐候性試験 | サンシャインカー ボンアーク灯式促進耐候性試験 | 適用環境 | ||
紫外線蛍光ランプ 式促進耐候性試験 | キャス試験 | ||||
試験時間 h | |||||
A1 | 240 | 120 | 4000 | 3000 | 過酷な環境で,かつ, 紫外線露光量の多い地域の屋外 |
A2 | 240 | 120 | 2000 | 1500 | 過酷な環境の屋外 |
B | 240 | 72 | 1000 | 750 | 一般的な環境の屋外 |
C | – | – | 350 | 250 | 屋内 |
注a) 耐候性は,キセノンランプ式促進耐候性試験又はサンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験のいずれかの試験を行う。
注b) 複合耐食性試験は,紫外線蛍光ランプ式促進耐候性試験を行った後,キャス試験を実施する。なお,この試験は,種類Cには適用しない。
表21 複合皮膜の性能(JIS H 8602-2010)
項目 | 種類 | 性能 | 試験方法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A1 | A2 | B | C | ||||||
陽極酸化皮膜の厚さ(平均皮膜厚さ)a)μm | 5以上,かつ,各測定点皮膜厚さが,すべて平均皮膜厚さの80%以上でなくてはならない。 | 6.4 | |||||||
キャス耐食性 | 試験時間 h | 120 | 72 | 24 | 6.5 | ||||
レイティングナンバーRN | 9.5以上 | ||||||||
塗膜の付着性 | 碁盤目試験 | 25/25 | 6.6.1 | ||||||
沸騰水碁盤目試験 | 沸騰水試験 | 試験時間 h | 5 | 6.6.2 | |||||
外観 | 塗膜にしわ,割れ,ふくれ及び著しい変色が生じてはならない。 | 6.6.2 | |||||||
沸騰水試験後の碁盤目試験 | 25/25 | ||||||||
塗膜の耐溶剤性 | 試験前後の塗膜の鉛筆硬度の低下は,JIS K5600-5-4の6.2に規定する硬度スケールで1単位以下でなければならない。 | 6.7 | |||||||
耐アルカリ性 | 試験時間 h | 24 | 8 | 6.8 | |||||
レイティングナンバー RN | 9.5以上 | ||||||||
複合耐食性 | 紫外線蛍光ランプ式促進耐候性試験 | 試験時間 h | 240 | – | 6.9 | ||||
キャス試験 | 試験時間 h | 120 | 72 | – | |||||
レイティングナンバー RN | 9以上 | – | |||||||
促進耐候性 | キセノンランプ式促進耐候性試験 | 試験時間 h | 4000 | 2000 | 1000 | 350 | 6.10 | ||
外観 | 著しい変退色及び著しいチョーキングが生じてはならない。 | ||||||||
光沢保持率 % | 75以上 | ||||||||
サンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験 | 試験時間 h | 3000 | 1500 | 750 | 250 | ||||
外観 | 著しい変退色及び著しいチョーキングが生じてはならない。 | ||||||||
光沢保持率 % | 75以上 |
注a)陽極酸化皮膜厚さを測定するときに,複合皮膜の厚さも測定しておくとよい。 なお,測定方法は,6.4による。
2. 塗 装
表22に各種塗料の性能比較を示す。
表22塗料の性能比較
性能 塗料 | 硬 度 | 密 着 性 | 可 擁 性 | 耐 (爪)傷 性 | 高 光 沢 性 | 経 時 後 加 工 性 | 耐 湿 性 | 耐 溶 剤 性 芳 | 耐 食 性 | 耐 候 性 エ | 耐 候 性 ク | | 褐 色 性 | 耐 | 耐 | 耐 摩 耗 性 | 単位膜厚 当たり コスト |
ポリエステル | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ |
アクリル | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
シリコンポリエステル | ◎ | ○ | △ | ◎ | △ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
ふっ化ビニリデン | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | × | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | - | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ×× |
エポキシ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | × | × | × | ○ | ◎ | ○ | ×× |
【性能】◎:優 ○:良 △:可 ×:不可
【コスト】◎:低 ○:中 △:中~高価 ×:高価 ××:非常に高価
アルミニウム平板にあらかじめ塗装したものがカラーアルミとして市販されている。
この場合前処理としてクロム酸クロメート又はりん酸クロメートを使用し塗料は,エポキシ又はポリエステル塗料を下塗りとし,上塗り塗料はポリエステル,シリコーンポリエステルおよびふっ素などを塗装焼付した2コート2ベークが普通である。塗装カラーアルミ独特のものとしては,アルミ素地の特長を生かしポリエステル系塗料を主としたカラークリヤー塗装材があり,他の金属塗装板では得られない優雅な感じのする材料として使用されている。また,高明度な色彩が得られるのも特長である。カラーアルミに使用する主な塗料の性質を表23に示す。
表23 カラーアルミに使用する主な塗料の性質
ア ク リ ル 系 | 耐汚染性,良質な光沢,表面硬度,耐候性,耐薬品性など優れた性能を持ち価格も比較的やすいことから広く採用されてきたが,加工性に問題があり室外用には使われなくなってきている。 |
ポリエステル系 | 印刷性,加工性,耐候性など欠点の少ない塗料で,広く採用されている。高加工性を要求されるものには高分子ポリエステルが使用されている。価格的には比較的やすい。 |
シリコンポリエステル系 | 耐候性に優れているが,加工性,耐食性がやや劣る。塗装ラインの汚染を起こしやすいため,使用量は減少している。 |
ふっ素系 (ふっ化ビニリデン系) | 耐候性,加工性,耐食性,耐汚染性などほとんどすべての性能について最良の塗料である。欠点は高光沢ができないことと価格が高いことである。 |
エ ポ キ シ 系 | 密着性,表面硬度,耐薬品性に優れているが,耐候性が劣る。主にプライマーコートやバックコートに使用されている。また,耐候性を必要としない各種キャップ類の加工塗料としても多く使用されている。 |
表24 カラーアルミの標準品質(JIS H 4001-2006に準ずる)
項目 | 試験方法 | 標準値 |
---|---|---|
外観 | 目視 | 使用上有害な欠陥のないこと |
膜厚 | うず電流式厚さ測定機など | 13μm以上 |
鉛筆引っかき硬度 | JIS K 5600-5-4 引っかき硬度法による | H以上 |
付着性 | JIS K 5600-5-6 クロスカット法による | 塗膜がはがれないこと |
耐曲げ性 | JIS Z 2248 金属材料曲げ試験法による | 塗膜がはがれないこと |
耐おもり落下性 | JIS K 5600-5-3 デュポン式などによる | 塗膜がはがれないこと |
耐塩水噴霧性 | JIS K 5600-7-1 耐中性塩水噴霧性による | 膨れ・はがれを生じないこと |
耐候性 | JIS K 5600-7-7 キセノンランプ法によるか、 紫外線カーボン促進耐候試験(1000時間) サンシャインカーボン促進耐候試験(500時間)の いずれかによる | 白亜化がJIS K-5600-8-6 の等級3以下 |
耐酸性 | 2%硫酸20ºC、24時間 | 色・光沢の変化少なく、膨れ・はがれのないこと |
耐アルカリ性 | 飽和石灰水20ºC、24時間 | 色・光沢の変化少なく、膨れ・はがれのないこと |
耐湿性 | JIS K 5600-7-2 連続結露法による | 著しい膨れを生じないこと |