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2013年10月24日 アルミ車両誕生50周年および2万両達成記念講演会より
川崎重工業

アルミ合金製構体 50周年の経過

アルミ合金の特長とアルミ合金製車両の利点

アルミ合金の特長
(1)「軽くて強い」
(2)「押出性に優れる」
(3)「耐食性に優れる」
(4)「リサイクル性に優れる」
矢印
アルミ合金製車両の利点
(1)軽量化
(2)製造コストの削減
(3)省メンテナンス
(4)リサイクル性

日本初のアルミ合金製車両

1960年:川崎重工は、ドイツWMD社と技術提携し設計製造技術を習得。車両の軽量化によるメリットが見込まれることからアルミ合金製構体の試作を山陽電鉄殿に打診
1962年:日本初のアルミ合金製車両 山陽電鉄2000系を納入。以来、1990年まで28年間運用された。

日本初のアルミ合金製車両

参考:現役最古のアルミ合金製車両

1964年に製造された山陽電鉄殿の3000系
製造から49年間経過した現在も、姫路〜三宮間で 運用されており、アルミ合金製車両として日本で最も長期間使用されている。

現役最古のアルミ合金製車両

・山陽電鉄2000系について

3両編成のアルミ合金製車両と同仕様のステンレス鋼製車両及び普通鋼製車両も製造された。

ステンレス鋼製車体の質量が14460kgに対してアルミ合金製車体の質量が9770kgであり、4690kg(32%)の軽量化が確認された。

運転時の使用電力や制輪子などの摩耗の比較の結果、重量の軽減率にほぼ近い低減率となることが確認された。

・山陽電鉄2000系

山陽電鉄2000系

・山陽電鉄2000系の構体構造

制輪子やパンタすり板の金属粉による、異種金属接触腐食が心配されたためクリア塗装を行っていたが、洗浄によって腐食は問題とならないことが分かり無塗装となった。

車体側面のうろこ模様
車体側面のうろこ模様

アルミ合金製構体の変遷

世代 素材成形技術 合金開発 接合技術
第1
1962〜
板材
形材(小形で単純な断面)
A5083板材&形材
A6061形材
(当時の既存材料)
溶接とリベットの併用
第2
1964〜
同上 A7N01板材&形材
(溶接構造用高強度材)
全溶接組立
抵抗スポット溶接
第2.5
1973〜
大型薄肉形材
(KOK 9,500ton押出機)
A7003形材 同上
第3
1982〜
大型薄肉形材+
大型中空形材
A6N01形材 形材間のミグ自動溶接またはFSW
第4
1992〜
大型中空形材の全面適用
(側ダブルスキン構造)
同上 同上

第1世代と第2世代

山陽電鉄2000系に代表される第1世代の技術的意義は、当時、既存の技術(材料、接合技術)で実用に耐える構体構造を成立させたことにあった。第2世代の技術的特長は、アルミニウムにZnとMgを添加したA7N01合金を使用した全溶接構造を適用したことにある。
 最初の第2世代:山陽電鉄3000系
最初の第2世代:山陽電鉄3000系

第2.5世代

第2.5世代の技術的特長

(1)Al-Zn-Mg系合金の押出性を改善したA7003合金

(2)1972年の軽合金押出開発(株)(KOK)の9500ton押出機の稼動開始に伴う押出形材の大型化

第2.5世代
第2.5世代の代表車両:新幹線電車200系

第3世代

第三世代の技術的特長

・押出性に優れたA6N01の適用
・構体の外板を押出材のみで構成

第4世代

第四世代の技術的特徴

・側構体と屋根構体へのダブルスキン形材の適用
・自動溶接による組立作業のさらなる合理化

最初の第3世代: 山陽電鉄3050系
最初の第3世代: 山陽電鉄3050系

アルミ合金製構体に関する近年の取り組み

山陽電鉄2000系に始まる第一世代から 近年の第四世代にいたるまでの
(1)軽量化
(2)製造コストの削減
(3)省メンテナンス
(4)リサイクル性の向上
などの改良が近年も続けられている。

(1)最適化解析の適用による軽量化

efSET®の構体設計への最適化解析の適用
制約条件:構体曲げ固有振動数、気密強度、疲労強度、座屈強度
設計変数:アルミ合金形材の板厚の分布
目的関数:構体質量最小
最適化解析の適用による軽量化

(2)セミダブルスキン構造によるコスト低減

側構体は、変動要素が多く、形材の標準化が難しい
セミダブルスキン構造によるコスト低減

(3)モノアロイ化によるリサイクル性の向上

7000系アルミ合金は高強度が要求される台枠構造に適 用されてきた。伴板モリのリベット配置を工夫することで リベット継ぎ手周辺の応力を低減し、モノアロイ化を実現 できる。
従来のリベット配置 局部応力を低減できる リベット配置
従来のリベット配置 局部応力を低減できる リベット配置

まとめ

アルミ合金製構体の先駆けとして山陽電鉄殿2000系が1962年に登場し、昨年、50周年という節目の時期を迎え、この間、第一世代から第四世代に至る進歩を重ねてきた。

世代の進展からわかるように、アルミ合金製構体の(1)軽量、(2)製造コストの削減、(3)省メンテナンス、(4)リサイクル性といった特長が再確認された。

エネルギー効率に優れ環境負荷が小さいという鉄道車両の特長を最大限に発揮できるように、今後もアルミ合金製構体のさらなる改良を行っていきたいと考える。